世界最大級の病院船マーシーが米大統領の要請により出動することになりました。 日本でも有名なこの船についてまとめてみました。
1.病院船マーシーとは
マーシーは米海軍が運営する病院船です。
英語ではMercyと綴り、その意味は”慈悲”や”情け”と言った意味合いで病院船にうってつけの名前がついています。
米海軍に所属する病院船としては最大級で、”マーシー級”と言った表現で他の病院船の大きさをあらわす時にも使われています。
2020年現在の船は3代目で、ジュネーヴ協定に従って、船およびその乗員は銃火器を運搬しておらず、本艦へ攻撃する行為は戦争犯罪と見做されます。
1976年に民間船のオイルタンカーとして建造されたこの船は、1984年に海軍に売却され、$208million(当時の為替レートで約493億円)と13ヶ月かけて前甲板を高く改造し、欄間軸、球状船首、前方ブリッジを備えた拡張甲板室および航空管制システムを備えたヘリコプターデッキを装備する病院船として生まれ変わりました。
マーシーの主な任務はアメリカ軍の活動を側面からサポートし、傷病兵に医療支援を行うことですが、 政府系機関からの要請に基づいて、災害被災者や人道支援対象者に対して医療支援を行うこともあります。
母港は米カリフォルニア州のサンディエゴ港で、そこには海軍医療センターも存在します。
2.マーシーの年代別活動一覧
マーシーは1986年11月6日に病院船として活動を開始しています。
以来様々な有事に対応しています。
(1)1987年-フィリピンでの訓練
1987年2月27日にフィリピンと南太平洋に向けて演習および人道支援活動の一環で活動を開始。
アメリカ海軍・陸軍・空軍の現役および予備役兵に加えてインド海軍兵、フィリピン軍医療スタッフ、および米国の民間医療スタッフが当ミッションに参加していました。
フィリピンの7つの港、南太平洋の7つの港で62,000以上の外来患者およびおよそ1,000人の入院患者を治療し、1987年7月13日、カリフォルニア州オークランドに帰還しています。
(2)1990〜91年-オペレーション・デザート・シールド
1990年8月9日に湾岸戦争での多国籍軍に医療支援を行うために、当ミッションに参加しています。
8月15日に米国を出発し、9月15日にペルシャ湾に到着。
以降6ヶ月間にわたり医療支援を行っています。
690名の患者の治療と約300件の手術を行なっています。
21名のアメリカ兵と2名のイタリア兵の捕虜の治療を行った後、1991年3月16日にペルシャ湾を出航し、4月23日にオークランドに帰還することでミッションを完了しています。
(3)2005年-オペレーション・ユニファイド・アシスタンス
2005年1月5日に、スマトラ島沖地震で生じた津波被害者支援のためサンディエゴを出港し、10万8千人の患者の治療を行いました。
(4)2006年-パシフィック・パートナーシップ
環太平洋パートナーシップ協定の一環でフィリピン、インドネシア、バンダ・アチェを訪問し人道的支援活動を実施。
米軍関係者以外にも民間医療スタッフや各国の医者、非政府関連組織のスタッフが活動に従事しました。
(5)2008年-パシフィック・パートナーシップ
2008年度の環太平洋パートナーシップ協定活動の一環で人道的支援活動をオセアニアと東南アジアで行うために4月14日にサンディエゴ港を出発。
900人の軍関係者以外に300人の米国の医療関係者と道路や工事建設のプロが米国以外にもオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、チリ、韓国、ポルトガルと日本から参加。
当初はフィリピン、ベトナム、ミクロネシア、東ティモールとパプア・ニューギニアを訪問する予定でしたが、同時期に襲った巨大サイクロンの被害者を支援するために行き先をブルマに変更したものの数日の活動で活動そのものから撤退。
6月10日にはフィリピンのミンダナオ島で同船所属のヘリコプターが襲撃されたことから支援活動を一時停止する事態に陥りました。
当活動では9万1千人の患者の治療と1,369件の手術を行なっています。
(6)2010年-パシフィック・パートナーシップ
日本の二隻のホーバークラフトと一緒に人道的支援活動に従事。
ベトナム、カンボジア、インドネシア 及び東ティモールを訪問し、109,754の患者の治療と1,580件の手術を実施しています。
(7)2012年-パシフィック・パートナーシップ
訪問対象地域で「民衆が非常事態に落ち着いて行動すること」を啓蒙する活動支援のために当作戦に参加。
インドネシア 、フィリピン、ベトナム、カンボジアで13のパートナー国と28の非政府組織スタッフと共に医療以外にも獣医や道路や橋の建設のプロなどが乗船し活動を終えています。
(8)平成25年台風第30号被害地域支援活動
フィリピンを襲った当該台風の被害者を支援する活動に出発を試みたものの作戦そのものが無くなりました。
(9)2014年-環太平洋合同演習(RIMPAC)
23の国々から環太平洋地域での軍隊演習に参加するスタッフを支援するために参加。
医療行為以外にも中国の病院船-ピース・アーク号との共同活動も話題になりました。
(10)2015年-パシフィック・パートナーシップ
2005年に津波に襲われたパプア・ニューギニア、フィジー、フィリピンとベトナムを訪問し当該地域の非常時の医療行為を啓蒙する活動に従事。
(11)2016年-パシフィック・パートナーシップ
環太平洋パートナーシップ協定設立から10年目の当年に、非常時に対する準備の大切さを啓蒙するために東ティモール、マレーシア、インドネシア 、フィリピンとベトナムを訪問。
(12)2018年-パシフィック・パートナーシップ
スリランカ での医療活動に従事することが発表されていました。
社団法人ユナイテッド・シーメンス・サービス(米大統領フランクリン・ルーズベルトの妻エレノア・ルーズベルト氏の発案によって設立された船員向け福祉団体)により当活動は表彰されています。
(13)2020年-コロナウィルス患者治療行為
3月23日に米国西海岸で爆発的に増加中のコロナウィルス患者を治療する活動に派遣されています(行き先は現在のところ不明)。
3.病院船マーシー中の様子
病院船マーシーの中の様子がわかる映像をご覧ください。
マーシーの船員と医療行為
こちらの映像では詳しい中の様子がよくわかります。
医療活動をメインに編集された映像
当船舶には、
- 集中治療病床:80床
- 回復病床:20床
- 中間ケア病床:280床
- 軽傷病床:120床
- 限定ケア病床:500床
があり、12の手術室を保有し同時に1,000名の患者の治療を行うことが可能です。
また、当船舶には、
- 受付
- 放射線科
- 医療研究室
- 滅菌室
- 薬局
- 理学療法室
- 火傷の治療室
- 集中治療室
- 歯科
- 眼科
- メガネの供給施設
- 遺体安置所
- 洗濯室
- 2つの酸素生成装置
- 血液貯蔵設備
- 血管造営検査設備
が存在しており、受け入れ先地域に入港後は総合病院として機能し大量の患者を治療することが可能です。
マーシーから積荷を搭載している様子
4.ネットの声
アメリカコロナ マーシー緊急出動
🇺🇸USA/世界最大の病院船マーシーが⚠️コロナ緊急出動。New York州に続きCalifornia州も「州民の56%、2550万人が感染する」と派遣を要請した。
⚠️Emergency dispatch
Mercy-class hospital ship・U.S. Navy
“Chinese virus” World Destruction pic.twitter.com/VqofxeJ5vh— 菊田邦洋✳️ (@palaiso9) March 23, 2020
US Navy preparing 2 hospital ships to fight coronavirus ‘trauma’ cases – Business Insider https://t.co/kMq1hEklZA アメリカ海軍は病院船「マーシー」と「コンフォート」を新型コロナ対策で出動準備に入ったが、病院船ではコロナ以外の患者を引き受けて、コロナ対応の病院を専念させる方針。
— JSF (@rockfish31) March 18, 2020
西海岸側でのCOVID19感染患者以外の医療支援を行うために、各種医療機材等の物品搭載中の米海軍病院船「マーシー」。 #週刊安全保障 https://t.co/8gu86wBFrT
— ナカムラ (@T_AH19) March 23, 2020
新型コロナの患者を収容するため米西海岸に派遣されるアメリカ海軍の病院船「マーシー」の準備の様子 pic.twitter.com/xz4gaHXHyc
— lain (@lain_the_wired) March 21, 2020
RT
マーシー級は物資の搬入の際にはクレーンを使う必要があるのか。その手間を考えると車両ランプを備えた日本の病院船計画は合理的ですね。— 四角号碼 (@Sikakugouma) March 23, 2020
CALではコロナ以外の患者を受け入れ予定の海軍病院船マーシー。
賛否はあるだろうけど、この選択肢があるアメリカはやはり凄い。 https://t.co/4d5zBM4Rm5— ⓚⓔⓘⓔⓜ🦋 (@suzan925) March 23, 2020
5. まとめ
米国は医療費が異様に高いことで有名ですが、この様な立派な船を持っているのはさすがだと言えますね。
早くコロナ騒動が終息して欲しいものです。